皆さんは虫の目レンズってご存じですか?
多分知らない人の方が多いと思いますが、簡単に言うと魚眼レンズでマクロ撮影をすることで被写体の周りの風景まである程度ピントが合った状態で撮影することでき、自身があたかも虫のように小さくなって撮影したかのような写真を撮ることの出来るレンズです。
この虫の目レンズは基本的に市販はされておらず、小さなcctv用の魚眼レンズとそれをカメラのセンサーにいい感じに結像させるためのマクロレンズをいい感じに組み合わせて自作する必要があります。
唯一中国のVenus Optics(通称LAOWA)がLAOWA 24mm F14 2X MACRO PROBEというレンズを販売していますが、非常にニッチな商品なこともあって約30万もします。
今回はそんな虫の目レンズを海外のYouTuberの動画を参考に約10,000円で作ってみましたのでご紹介させていただきます。
参考動画
私は英語はわからないのですが、要は3Dプリンターで作ったマウントアダプターに顕微鏡の対物レンズを取り付けて、さらに対物レンズにアダプターとcctvレンズを取り付けるようです。
アダプター製作方法
3Dデータをダウンロード
こちらからアダプターの3Dデータのファイルがダウンロードできます。リンク先の画像の下のThing Filesに各種マウントのファイルがあります。
Thingiverseってこの界隈じゃ有名なんですかね?私は疎いので全然知りませんでしたが色んな3Dデータが無料で公開されています。
無料といっても著作権はデータ制作者にあるので、ダウンロードしたデータを使ってなんでも出来るわけじゃないので気を付けましょう。
3Dプリンターで印刷
ダウンロードしたデータを使って3Dプリンターで印刷します。
3Dプリンターなんて持ってないよって方はDMM.makeなどのサービスを利用すると良いかと思います。
私も持ってないのでDMM.makeで印刷してもらいました。
DMM.makeの場合、印刷の設定など指定できるのかどうかわかりませんが、自前のプリンターで印刷する場合は3Dデータのダウンロード先に書いてあるので参考にしてみてください。
DMM.makeの場合色んな素材が選べますが、アダプター自体がそこそこ大きいので素材によってはかなりの値段になってしまします。私は一番安いエコノミーレジンという素材のABSライクってのを選択して印刷しました。
対物レンズ用のアダプターが3,479円、cctvレンズ用のアダプターが718円ですが、FreeCADなどのソフトを使って一つにまとめて注文すると3,809円と少しだけ安く印刷できます。
手直し
実は届いてもこのままじゃ使えませんでした。
3Dデータが悪いのか、はたまたプリンターが悪いのか何なのかわかりませんが、そのままではカメラに取り付けることが出来ませんでした。
アダプター側のマウントの爪が厚いため位置を合わせてカメラ側に嵌ってもそこから回転させることが出来ませんでした。
仕方がないので爪をやすりで削ることで嵌められるようにしました。
また、その他のネジ部分もあまり精度が良いとは言えない状態でしたので、何度か対物レンズやcctvレンズを付けたり外したりして当たりをつける必要がありました。
その際ポロポロとプラスチックが削られて粉が出るので、出なくなるまで着脱を繰り返します。
さらにカメラに取り付ける際にもマウント面の部分が削れてセンサー面に粉が落ちたりしましたので、取り付け取り外しはカメラのセンサーを地面に向けて着脱した方が良いです。
最悪の場合粉がカメラ内部に入り込んでしまって悪さをする可能性もありますので、自己責任でお願いします。
塗装
更にもう一つやることがあります。
というのもエコノミーレジンのABSライクは色が白いので黒く塗装する必要があります。
自前の3Dプリンターであれば黒色のフィラメントで印刷すれば塗装する必要は無いかもしれません。
塗装前のアダプターに対物レンズを付けて中を普通のレンズで撮影するとこんな感じです。
黒く縞になっている部分は左手で掴んでいるからで、これだけ光を透過していては何にも写せません。
実際このまま取り付けて撮影するとこんな感じで何も写せません。
そこで中と外を黒く塗りました。
外側は普通のラッカー塗料を筆塗りしています。ここは遮光出来れば何でもいいやってことで結構雑に塗ってあります。
見てのとおり普通のラッカー塗料では黒く塗ったとしても光を反射して白く写っていますので、内部はもっと黒い塗料を塗った方がいいと思います。
私の場合はこちらの真・黒色無双を塗りました。
一応タミヤのナイロン/PP用プライマーで下塗りしてから黒色無双を筆で塗りしました。
プライマーが絶対に必要なのかどうかは分かりませんが一応塗っといた方が良いと思います。
本当はエアブラシで塗った方が反射率を抑えられるようですが、持ってないですし多分筒状なのでうまく塗れないかと思います。
塗料が乾いたらネジ部についた塗料を落とすために対物レンズとcctvレンズを何度か着脱してブロアーで掃除しました。
黒色無双は結構簡単に取れるので乾いても触らない方がいいです。触らなければ大丈夫かと思いますが、カメラに取り付けた状態でカメラ内部に剥がれ落ちる可能性も無きにしも非ずかと思いますので自己責任でお願いします。
レンズ紹介
ここからはアダプターに取り付けるレンズの紹介をします。
動画ではAmscopeというメーカーの対物レンズと中華製のcctv魚眼レンズを使用していました。
今回私もAmscopeの同じレンズと一応同じ型式の魚眼レンズ、そして比較用にAmscopeより安く買える対物レンズを購入しました。
Amscopeの対物レンズは主要なショッピングサイトではアマゾンでしか販売されてなさそうな感じで、さらに残念なことに送料がめちゃくちゃ高いです。
公式HPからも購入できそうだったのですが、こちらもやはりアメリカからの発送になるので送料が数千円かかるようでした。
仕方ないので他の安い対物レンズで代用しようかとも思ったのですが、AliExpressなら送料無料で値段もアマゾンのレンズ本体価格より安く売られていたのでそちらで購入しました。
動画と同じレンズを購入するならAliExpressでの購入一択かと思います。
cctvレンズは参考動画の説明欄のリンクはebayのものが貼られていましたが、日本の主要なショッピングサイトでも同等のものは色々あります。
微妙に形式の違うものもたくさんありますが取り付けネジがM12 P0.5のものなら多分ですが、どれでも使えるような気はします。
とはいえ一応私は動画と同じ「1.8㎜ 5MP 1/2.5″」のものを購入しました。こちらもアマゾンだと1,000円以上するのですが、AliExpressで私が購入すれば600円くらいでしたのでAliExpressでの購入をおすすめします。
上記の二つのレンズだけあればよいのですが、私はもう一つ対物レンズを購入してみました。
後で説明しますが、結果的にこのレンズは使い物にならなかったので購入しなければよかったです。
ちなみに対物レンズには倍率以外にも色々と種類があるようですが、今回のアダプターで使用する場合は、レンズ本体や商品説明に160と書かれたものを使用してください。∞と書かれたレンズは使用できません。0.10とか0.17とかの数字は違っても多分ですが、使えるような気はします。
レンズ外観
まずはAmscopeのレンズですが、よくわからないスポンジ素材のケースのようなものに嵌め込まれて届きました。
それはともかくプラスチックのケースが付いてくるのはよかったです。商品画像にはケースは写っていなかったと思うのでなんとなくレンズがそのまま剝きだして届くようなイメージをしていました。
ケースから出すとこんな感じです。
そしてこの構造が重要なのですが、このレンズは写真のように外側の鏡筒というかレンズフードというかなんと呼べばいいのか分かりませんが外せるようになっています。普通にネジになっているだけなので、ここにcctvレンズ用のアダプターをねじ込むことができます。
SDカードと比較するとほぼ同じくらいの大きさです。小さいですが全体的に金属でできていますので見た目の印象よりはずしっとしています。
次にcctvレンズです。
透明なカバーとレンズがポリ袋に入って届きましたが、カバーはゆるゆるなので開封した時には取れてしまっていました。
大きさはSDカードよりも断然小さいです。
最後に比較用のレンズですが、このレンズはAmscopeのレンズのように外側が取り外せるような構造にはなっていませんでした。
この時点でこのレンズの利用価値が半減しました。
さらにまた後で説明しますがテスト撮影の結果、撮影用レンズとしての利用価値は0になってしまいます。
虫の目レンズを使ってみる
これでやっとアダプターとレンズが揃ったのでカメラに取り付けて撮影が可能になりました。
冒頭で書いたようにアダプターとレンズ(比較用レンズを除く)と塗料の合計購入金額が約10,000円です。
しかし実際に撮影するためには他にも必要なものがあります。というのもアダプターのリンク先にも書かれていますが、対物レンズのF値はF20ということで非常に暗いのでフラッシュが必須だからです。フラッシュがないとISO感度をアゲアゲにするかシャッタースピードを遅くするしかありませんが、どちらも現実的ではありません。
参考動画でもフラッシュを90°傾けられるホットシューアダプターを付けた上でフラッシュの発光部分にプリングルスの空容器を取り付けて光が回るようにして撮影しています。
必要機材
ということで虫の目レンズで撮影するために私が購入した機材を軽くご紹介します。
フラッシュは以前から持っていたものですが、安いもので十分だと思います。
ホットシューアダプターは参考動画と同じようにフラッシュを90°傾けて付けて、発光部を出来るだけレンズに近づけるためのものです。参考動画の説明欄に書いてある商品は、今回の用途では私が購入したものよりも断然使い勝手が良いと思うのですが、残念ながら説明欄にも書いてありますが既に販売が終了しています。同等の商品が無いものか探してみたのですが見つけることはできませんでした。
私が購入したホットシューアダプターはフラッシュの接点が無いためシンクロコードが必要です。長さは必要ないのでとにかく短く、一番安い商品がこちらのニコンのシンクロコードでした。
最後に光を拡散させて被写体に回らせるためのフレキシブルリフレクターです。
参考動画のようにプリングルスの空き箱で作るのも安上がりでよいと思いますが、フレキシブルリフレクターの方が汎用性が高いかと思い購入してみました。
以上の合計が約10,000円となり、20,000円ほどで等倍以上のマクロ撮影および虫の目レンズ撮影が可能になります。
テスト撮影とその様子
長くなりましたがこれで撮影の準備が整いましたので、実際に撮影してみましょう。
画像をクリックで等倍サイズで見られます。
まずはamscopeの対物レンズで一万円札のマイクロ文字を撮影してみました。
レンズの倍率が4倍なので4倍で撮影できていると見てよいのでしょうか。定規でも撮影すれば大体の倍率が分かるのでしょうが忘れていたのでしていません。
ワーキングディスタンスはこんな感じで、大体3cmくらいのようです。
これが比較用のレンズです。
見てのとおり中央付近しかピントが合っていません。
というのもこのレンズは商品名に色消しとついているので、アクロマートではあるのでしょうが、planとは書かれていないので像面湾曲が補正されていないレンズなのです。
恐らく顕微鏡で目で見て観察する分にはそこまで支障は無いのでしょうが、写真撮影には不向きであると言えます。
ということで、先に書いた通りcctvレンズ用のアダプターも取り付けられない、そもそも撮影にも不向きで今回の用途では利用価値は0と言えると思います。
そしてこれがお待ちかねのcctvレンズを取り付けた状態で撮影した作例です。被写体は家に転がっていたゴンべの小さなフィギュアです。
特に編集はしてないのですが、倒立像に映るので上下が逆になります。もちろん左右も逆になるので構図の調整がすごく難しいです。
それと180°の魚眼レンズのはずですが180°もないような気がします。参考動画を見ても同じ感じなので画角に関してはこんなもんのようです。
撮影の様子はこんな感じです。
先に紹介したホットシューアダプターにフラッシュを取り付ける場合横向きにしか取り付けられないのでこのような形になります。
また先の作例の被写体の上側(倒立像なので写真の下側)にフレキシブルリフレクターの影が映りこんでいるのでもう少しいい具合に調整するか、やはり参考動画と同じようにプリングルスの空き箱で自作する方が良いかもしれないです。四角くトリミングしたり、屋外での撮影だとまた違うかもしれないので試行錯誤が必要ですね。
まとめ
以上たまたまYoutubeの動画で見つけた虫の目レンズの作ってみた結果のご紹介でした。
まだ屋外で使ったりしてないので写りにに関してはよくわかりませんが、対物レンズの写りは結構良さそうに思いました。
cctvレンズを付けた状態での写りは悪くはないですが、まぁこんなもんかといった感じでした。とはいえ実際に屋外で使えばさほど問題はなさそうにも思います。
それよりもゴテゴテと色々装着して屋外で上手く撮影できるのかどうかといったところですね。こればっかりは練習と試行錯誤が必要だと思います。
それも含めて色々と楽しめそうです。他のcctvレンズを使ってみたり他の倍率の対物レンズを使ってみるのも楽しそうで、夢が広がります。変なレンズ沼に嵌っているとも言えます。
ちなみにですが、実はこの他に魚露目8号という虫の目レンズ用のレンズを持っていて、写り自体は魚露目8号のが良いように思いました。このレンズも単体では使えず何かと面白いレンズなのですがそれはまた別の機会にでもご紹介できたらと思います。
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